静かに、確かに。

日常の機微を綴ります。

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

結い文

月露に身を任せた孤独の軋む影ふたつ 五感全てで愛したかった‪声も匂いも瞳の色も触れる肌も唇も 体温に溶けてしまった胸の内華奢な指が髪に絡んだ 静謐なワンルームでこの先忘れる事が無いように僕等は結び合ったのだ

9.10

睡眠不足に目を擦る度‪私を覆う繭が転がり落ちて‬‪残った芯は小振りであったが‪存外 撓やかで強かであった そんなみみっちい豊かさを抱いて自己同一性と他者評価に板挟まれる そうここは東京 私など選んではくれない

9.9

自律神経の調律不全平均律と純正律の狭間で規律が狂って 自我という膜が破けて秒速5センチメートルの速さで破綻する 浸した黒が漆黒では無い事がせめてもの救いで鯨雲にたらればを吐き散らかす時間は胃袋を締めていく

9.8

強かと淑やかと蕭やかとを認めて首の皮一枚で繋がる自我が枝葉末節に千切れたりする 街が夕陽に沈む様とか遠く焦がれた誰かの笑顔とか 自己肯定感なんぞ疾うの昔に捨てた仮初の同一性に永遠の平和を求め今日も家を出る

9.7

季節外れの風鈴が横殴りのにわか雨に晒され 心が沈殿した土砂降りの道中もう驚かない 寧ろ安堵している悲しくないなんて言わないが踏ん切り付けるにはもう充分だ なんて早とちる二十時前遠退け過去 日照り雨が呼んでいる

9.6

荒れ高鳴るは 雷雨か心音か清涼感と倦怠感とが拮抗徒労に終わる無謀と心電図歌い上げた天井 見送った天然水言葉で言葉を隠すのはお手の物蔑ろに扱うだけ上等全く持って甲斐性無い振ったつもりが振られていたのは 僕の方

9.5

月を見て思い返す想い出のひとつひとつ詳かに摘み上げ その悦びに触れる度重力に涙が惹きつけられる 叶わない夢だからこそ美しいそんな事知りたくなかった 貴方は今 幸せですかそうであって欲しいと 願って止まぬ月影の夜

9.4

夕立は情熱を洗い落とす僕を成し得る為 君を成し得る為 そういえば いつかもこんな雨だった そうして思い返せる日々は何処か美しくて やるせなくて 霞んでしまって雨空だけは味方だからって 雲霧のドッペルゲンガー 見紛う雨

9.3

終わりの見えている恋愛を積み上げようとするのは愚かでしょうか 見返りすら求めない虫のさざめき 移り変わり そもそもこれを恋愛とは呼ばないでしょう あなたの声が遠く響く入道雲が遠く棚引く夕立がもう直ぐやって来る

9.2

経歴ばかりの潔癖主義がのさばる日経上場市場 残業手当の付いた残暑雨模様に潜る地下街は不快に蒸れて期限の切れた定期に舌打ち蹴りを付ける為に仮りを作って憂さ晴らし 見繕った流行は自身の市場価値の為に他ならない

9.1

過去の貴方に罪あれど 今の貴方に罪はない 長梅雨明けて 一頻りに晴れ渡り顧みる笑顔 嘘偽りは無くならばと腹を括ろうか 長月始まり ひとつ目のこの日私は貴方を許してみようならばとこの場に刻む 蝉時雨が鈴虫の音に代わる

悩みの種

静かな森に悩みの種がひとつ空から落ちて根を張って芽吹いた双葉 烏はそれをまんじりと見つめている幾つもの夜を盗んで抜け駆けしてきた彼が盗めもしないそれを愛おしそうに見つめている 晴れの日には嘴で水を汲み雨の日には羽を広げて傘になり風の日には足…