静かに、確かに。

日常の機微を綴ります。

北へ

北へ 北へ 踏み込むアクセルの加速 心の焦燥感との溝の深さ 北へ 北へ 浅い睡眠に眼精疲労 気休めの音楽で飲み干す水分 北へ 北へ 遠く離島の原風景 旋回する風車の羽 佇む原子力発電所 北へ 北へ 潮風が髪を掻き上げる 高波が岩肌を穿つ 北へ 北へ 自ら断ち…

2.21

彼とお付き合いをする前、彼は自らをバイセクシュアルだと言い、子どもや家庭への憧れを口にしていた。 だから俺からの告白はしなかった。 それでも一緒にいたいと言ってくれた時は嬉しかった。 けど同時に、彼が素敵な女性と出会ったとしたら俺は身を引くべ…

珈琲は嘘をつく

朝露に溶ける 夕霧に香る それを合図に鵯の群れが去っていく 想い出の中 貴方の声を飲み干しても 貴方の体温を飲み干しても ただ苦いだけの生活の隙間 この胸焼けはさっき飲んだ珈琲のせいだ 冷めるまでの180秒間 紡いだ文章すらも滲んでしまって 滴る後悔の…

2.15

3年前で更新の途絶えた自身のブログを立ち上げる どうも黒歴史が詰まっていて嫌なものだが不思議と削除する気にはならない それどころか、今もこうして新しく歴史を刻んでいるのだから手に負えない 自分の頭の中を整理するにはちょうど良い作業だし、現に僕…

失墜

それは嘴 漆喰の如く黒い嘴 ある時僕は思った 何よりも気高いその誇りと 何よりも大切な貴方の存在と その両方を失った僕に いったい何が残るのか それは嘴 鋒の如く鋭い嘴 ある時君は言った 何があっても貴方を信じている 何があっても味方でいる その言葉…

2.13

梢が揺れた、それだけの事だ 2月上旬、空は曇っていた 河辺でキャッチボールをしている高校生くらいの男がふたり その飛距離に呼応するように声を張っている 学校の事だろうか、部活動のことだろうか 土手を走る車の音に掻き消されて話の内容までは耳に届か…

2020

2020年が終わろうとしているので最後のブログを。 今年の目標「利他行動」「メタ認知」「承認顕示」に関しては 振り返るとどれも不十分な感じがします。 勿論意識して行動していた場面は多々思い浮かぶけれど それが自分自身に何か実を結んだかというと甚だ…

AM3:00

久々に話そうぜ 俺が珈琲を淹れるからこうやって話すのはいつ振りだろうな昨日の事のような 数年前の事のような募る話があるんだ ゆっくりしていけよ 先に湯を沸かして 豆を粗く挽こうどうだ 良い趣味してるだろお前は知らないよな 俺が珈琲を好きになった事…

有明行燈

純粋無垢な冬を夢想する あたり一面が銀世界になって 二度と戻ることのない雪景色を空想する 願うのはいつだって闇の中にある光だけ 数奇的な田舎の夜空を思い浮かべて 幾何学的な都会の夜景に想いを馳せて もうすぐほら朝焼けがやってくる じきに太陽が笑顔…

あきかぜ

枝先の葉が千切れる瞬間を瞬きで見過ごした 君の目尻は切長で懐かしい温かさと冷たさで 見惚れた僕の頭上を上滑ったのは先ほど千切れた枯葉だった 僕は色付く前の紅葉が好きだった 木枯らし吹けや 桐一葉笑う僕は 昼行灯 さすらば流離え 青天井笑う君は 風来…

空空

「自傷的な空だ」と白い息を吐いた 10両編成に揺られる人々を見限る この街を去るまで 残り数日 僕自身が脱輪するまで 残り数日 電車を降りると 冬の土の匂いは 僕にとどめを刺そうとする 僕にとどめを刺そうとする 差し迫った未来屑 押し黙った雨映え それ…

ビバインリビドー ※一部

機会を得られた瞬間に消失する 僕の性的倒錯 性的衝動 満ち引きというのはその程度のもの 実態なんか在りやしない ビハインリビドー ビハインリビドー 淫らを汚さぬ獣に用は無い 狂うアノミー 出しゃばるラブソング 怖気付いた繊細さは置いていけ 駆け引きと…

日々

書き連ねる 日常の系譜 世の中への失望なんて 生への執着なんて 今更書き直す気にもなれなくて 何故だろう 満たそうとすればするほど 枯れていくのは 乾涸びていくのは 葉の末端から 徐々に色付き始める季節の儚さとか 大好きなあの子が 僕の知らない人と口…

結い文

月露に身を任せた孤独の軋む影ふたつ 五感全てで愛したかった‪声も匂いも瞳の色も触れる肌も唇も 体温に溶けてしまった胸の内華奢な指が髪に絡んだ 静謐なワンルームでこの先忘れる事が無いように僕等は結び合ったのだ

9.10

睡眠不足に目を擦る度‪私を覆う繭が転がり落ちて‬‪残った芯は小振りであったが‪存外 撓やかで強かであった そんなみみっちい豊かさを抱いて自己同一性と他者評価に板挟まれる そうここは東京 私など選んではくれない

9.9

自律神経の調律不全平均律と純正律の狭間で規律が狂って 自我という膜が破けて秒速5センチメートルの速さで破綻する 浸した黒が漆黒では無い事がせめてもの救いで鯨雲にたらればを吐き散らかす時間は胃袋を締めていく

9.8

強かと淑やかと蕭やかとを認めて首の皮一枚で繋がる自我が枝葉末節に千切れたりする 街が夕陽に沈む様とか遠く焦がれた誰かの笑顔とか 自己肯定感なんぞ疾うの昔に捨てた仮初の同一性に永遠の平和を求め今日も家を出る

9.7

季節外れの風鈴が横殴りのにわか雨に晒され 心が沈殿した土砂降りの道中もう驚かない 寧ろ安堵している悲しくないなんて言わないが踏ん切り付けるにはもう充分だ なんて早とちる二十時前遠退け過去 日照り雨が呼んでいる

9.6

荒れ高鳴るは 雷雨か心音か清涼感と倦怠感とが拮抗徒労に終わる無謀と心電図歌い上げた天井 見送った天然水言葉で言葉を隠すのはお手の物蔑ろに扱うだけ上等全く持って甲斐性無い振ったつもりが振られていたのは 僕の方

9.5

月を見て思い返す想い出のひとつひとつ詳かに摘み上げ その悦びに触れる度重力に涙が惹きつけられる 叶わない夢だからこそ美しいそんな事知りたくなかった 貴方は今 幸せですかそうであって欲しいと 願って止まぬ月影の夜

9.4

夕立は情熱を洗い落とす僕を成し得る為 君を成し得る為 そういえば いつかもこんな雨だった そうして思い返せる日々は何処か美しくて やるせなくて 霞んでしまって雨空だけは味方だからって 雲霧のドッペルゲンガー 見紛う雨

9.3

終わりの見えている恋愛を積み上げようとするのは愚かでしょうか 見返りすら求めない虫のさざめき 移り変わり そもそもこれを恋愛とは呼ばないでしょう あなたの声が遠く響く入道雲が遠く棚引く夕立がもう直ぐやって来る

9.2

経歴ばかりの潔癖主義がのさばる日経上場市場 残業手当の付いた残暑雨模様に潜る地下街は不快に蒸れて期限の切れた定期に舌打ち蹴りを付ける為に仮りを作って憂さ晴らし 見繕った流行は自身の市場価値の為に他ならない

9.1

過去の貴方に罪あれど 今の貴方に罪はない 長梅雨明けて 一頻りに晴れ渡り顧みる笑顔 嘘偽りは無くならばと腹を括ろうか 長月始まり ひとつ目のこの日私は貴方を許してみようならばとこの場に刻む 蝉時雨が鈴虫の音に代わる

悩みの種

静かな森に悩みの種がひとつ空から落ちて根を張って芽吹いた双葉 烏はそれをまんじりと見つめている幾つもの夜を盗んで抜け駆けしてきた彼が盗めもしないそれを愛おしそうに見つめている 晴れの日には嘴で水を汲み雨の日には羽を広げて傘になり風の日には足…

8.31

みみっちい豊かさに身の程も弁えず牽制する統制 絶世の憂世 ‪思考に何もかも追いつかないランドルト環が示す道標雲霧に紛れ条件反射 もどかしさを抱えても往生際の悪さには定評がある孟秋のバスに揺られ見る世田谷の街

8.30

待宵の月 遠慮がちな日陰道 異常 過剰 と曰うは せせら笑いの山茶花と急がば回れ と曰うは 伏して見つめる椿かな 流転する万物の様局所的ならば遅い変化なれど総て延べれば語るに足らず 急くな だが 留まるな今は唯 自己研鑽の時

8.29

この瞬間に出逢えた喜びいつか終わりが来る寂しさ 君は前者にその身を投じ僕は後者にその身を強張らせ 合わない歯車が軋む様な笑顔に痛む胸 枯れ去り際に 捨て置くならば 嘘偽りは無い この言葉を君をただ 愛している

8.28

会った事もない想い人の様な微睡っこしさで番傘の朱が目を惹く際立ちで微弱な情動がさんざめく あれは本当に僕の感情だろうか 海が燃え上がる時想いが灰になる瞬間を悟るそのあっけなさがどうも僕の物とは思えないのだ

8.27

形容し難い未来図重なる憚る屈辱 燻る痴情 忘れ去れずその端々が織り成すパッチワーク ダイアモンドの中 時は遅く進む内側からの景色なんて雑多な万華鏡の如く目も当てられない いつかこの外に飛び出す美しき殻を打ち破る