静かに、確かに。

日常の機微を綴ります。

100文字日記

9.10

睡眠不足に目を擦る度‪私を覆う繭が転がり落ちて‬‪残った芯は小振りであったが‪存外 撓やかで強かであった そんなみみっちい豊かさを抱いて自己同一性と他者評価に板挟まれる そうここは東京 私など選んではくれない

9.9

自律神経の調律不全平均律と純正律の狭間で規律が狂って 自我という膜が破けて秒速5センチメートルの速さで破綻する 浸した黒が漆黒では無い事がせめてもの救いで鯨雲にたらればを吐き散らかす時間は胃袋を締めていく

9.8

強かと淑やかと蕭やかとを認めて首の皮一枚で繋がる自我が枝葉末節に千切れたりする 街が夕陽に沈む様とか遠く焦がれた誰かの笑顔とか 自己肯定感なんぞ疾うの昔に捨てた仮初の同一性に永遠の平和を求め今日も家を出る

9.7

季節外れの風鈴が横殴りのにわか雨に晒され 心が沈殿した土砂降りの道中もう驚かない 寧ろ安堵している悲しくないなんて言わないが踏ん切り付けるにはもう充分だ なんて早とちる二十時前遠退け過去 日照り雨が呼んでいる

9.6

荒れ高鳴るは 雷雨か心音か清涼感と倦怠感とが拮抗徒労に終わる無謀と心電図歌い上げた天井 見送った天然水言葉で言葉を隠すのはお手の物蔑ろに扱うだけ上等全く持って甲斐性無い振ったつもりが振られていたのは 僕の方

9.5

月を見て思い返す想い出のひとつひとつ詳かに摘み上げ その悦びに触れる度重力に涙が惹きつけられる 叶わない夢だからこそ美しいそんな事知りたくなかった 貴方は今 幸せですかそうであって欲しいと 願って止まぬ月影の夜

9.4

夕立は情熱を洗い落とす僕を成し得る為 君を成し得る為 そういえば いつかもこんな雨だった そうして思い返せる日々は何処か美しくて やるせなくて 霞んでしまって雨空だけは味方だからって 雲霧のドッペルゲンガー 見紛う雨

9.3

終わりの見えている恋愛を積み上げようとするのは愚かでしょうか 見返りすら求めない虫のさざめき 移り変わり そもそもこれを恋愛とは呼ばないでしょう あなたの声が遠く響く入道雲が遠く棚引く夕立がもう直ぐやって来る

9.2

経歴ばかりの潔癖主義がのさばる日経上場市場 残業手当の付いた残暑雨模様に潜る地下街は不快に蒸れて期限の切れた定期に舌打ち蹴りを付ける為に仮りを作って憂さ晴らし 見繕った流行は自身の市場価値の為に他ならない

9.1

過去の貴方に罪あれど 今の貴方に罪はない 長梅雨明けて 一頻りに晴れ渡り顧みる笑顔 嘘偽りは無くならばと腹を括ろうか 長月始まり ひとつ目のこの日私は貴方を許してみようならばとこの場に刻む 蝉時雨が鈴虫の音に代わる

8.31

みみっちい豊かさに身の程も弁えず牽制する統制 絶世の憂世 ‪思考に何もかも追いつかないランドルト環が示す道標雲霧に紛れ条件反射 もどかしさを抱えても往生際の悪さには定評がある孟秋のバスに揺られ見る世田谷の街

8.30

待宵の月 遠慮がちな日陰道 異常 過剰 と曰うは せせら笑いの山茶花と急がば回れ と曰うは 伏して見つめる椿かな 流転する万物の様局所的ならば遅い変化なれど総て延べれば語るに足らず 急くな だが 留まるな今は唯 自己研鑽の時

8.29

この瞬間に出逢えた喜びいつか終わりが来る寂しさ 君は前者にその身を投じ僕は後者にその身を強張らせ 合わない歯車が軋む様な笑顔に痛む胸 枯れ去り際に 捨て置くならば 嘘偽りは無い この言葉を君をただ 愛している

8.28

会った事もない想い人の様な微睡っこしさで番傘の朱が目を惹く際立ちで微弱な情動がさんざめく あれは本当に僕の感情だろうか 海が燃え上がる時想いが灰になる瞬間を悟るそのあっけなさがどうも僕の物とは思えないのだ

8.27

形容し難い未来図重なる憚る屈辱 燻る痴情 忘れ去れずその端々が織り成すパッチワーク ダイアモンドの中 時は遅く進む内側からの景色なんて雑多な万華鏡の如く目も当てられない いつかこの外に飛び出す美しき殻を打ち破る

8.26

日の入から日の出まで街灯に照らされる僕等の影死神の如く見張っているのは近隣住民の閑静な平和主義 命短し 火花は尊し その数多たる星に僕は何時までも願うだろう ‪暗順応に薄くなる後悔いつの日か きっと晴れるといい

8.25

寂れた街並 多弁な街路樹 家出の路地雨上がりのコンクリは馨しい息苦しいと逃げ出したんだから当然か 握りしめた御年玉 僅か三千三千世界を渡るには無謀と知り得ぬ年の瀬 不慣れな唾を吐いて強がった少年に夜の帳が落ちる

8.24

無言の回答に一杯の珈琲を躊躇いの口付け 強引な憂い重ねる快楽に 時間の概念は一石を投じる 本心から最も遠くに在る本心心の準備 未完遂の痕跡 見間違えただけの信号機 遮る日差しは兆し急く心を 知って抑える 僕はヒグラシ

8.23

人の表情その機微に具現する静かで 確かな 想いの全て 僕には知り得ない 未知数として僕は触れていたい その温度に 目尻が下がる 口角が上がるその瞬間さえ見逃さなければそれで良い だって人の笑顔ってのは こんなにも美しい

8.22

生温いジャスミンの甘い香り大久保の街 ガラ人間がのさばって歩く僕は逆さ目立つ灰色 彼の為になる行動を出来ただろうか 出来るだろうか あの頃と変わったと実感したくてあの頃と同じ道を歩く馴染まない様に 溶けない様に

8.21

明日になれば僕はまた過ちを犯す望む未来は俄然遠退く 薄っぺらい言葉達は喉元痞えて多弁な僕を寡黙に見せる 明日になれば 今日が終わり明日になれば 明日が始まり明日になれば 昨日が積み重なり 僕は過ちを犯して 僕となる

8.20

僕が笑ったら君が笑った鏡に映るかの様に僕の目に映った 差し押さえの水道ガス電気 通信制限峠を越えた見様見真似の憂さ晴らし ‪‬生きにくいと声を漏らしてしかし僕等は笑い合える 人一人救えるだけで僕等は肯定される

8.19

青空の下 自転車で一本道を滑走するいずれ終わりが来る一本道を滑走する 白シャツは汗に透けてその体躯は加速度を内包して滑走と言うより滑落しているのか 要らない 要らない こんな希望なら車輪の轍は自己矛盾を両断する

8.18

僕等が青春と呼ぶそれを下劣だと蔑むあんたが嫌いだった アンタレスの星が瞬いて 見上げる夜空血走る目のあんたも同じだったのかな 世界から爪弾きにされた僕等と刃物を向けるあんたの若い頃の姿が重なって 思考が上滑る

8.17

別離の日から僕は珈琲を 君は煙草を新しい相棒にして 何処か擽ったい心持ちでよく知るはずの互いを知っていく再会の日 涙が地面に落ちるのはそれなりの重さがあるから そうして湿気った互いを僕等は今日も相棒と呼び合う

8.16

日に焼けた少年は小さな部屋で窓を開けて夜空を見上げる茅野市の風は雑木林を駆け抜けて鈴蛙の鳴き声を運ぶ 母の笑顔は正夢 君の笑顔は戒め穏やかな蝉時雨 佇む諏訪の湖面 祭りの後の静けさたるや星の瞬きの恋しさたるや

8.15

中止の花火大会 去年は君と行ったあれが僕等の最後の旅 家族の事 転勤の事理性的には的を射た判断だった 筈だった頭に来るぜ 反吐が出るぜ身勝手な自分に辟易する 蔑んでも後悔は消えない‪せめて遠退く花火に手を振るだけ

8.14

誰にも触れて欲しくない胸の内誰でもない人なら触れさせられるでしょうか 忘れられてしまう事の寂しさと安堵と押し黙って握り締める処方箋 自惚れに喝采 野次馬は潮騒夕立にも 花火にも 君の面影を見る内はその時ではない

8.13

人いきれに鈴虫は八つ鳴く相反する正論が ぶつかっては砕ける 皆まで言うまでも無い 曇天を打ち破る怒号を暗澹たる行き先に一条の光を 時間が止まる 糞ったれた世界のど真ん中八つ裂きにされて 震える君の心のままを 吠えろ

8.12

‪君は盲目だ花が花であれるのはひと季節の間だけ湖畔の木漏れ日 日傘を畳んで腰掛けて 日焼け 黄昏れ 尻取り合戦知って取るのは朝ぼらけ 僕なんかと罵ったとき遠く雷鳴が高鳴った それは僕の鼓動だった盲目なのは僕の方だ