静かに、確かに。

日常の機微を綴ります。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

7.31

その日暮らしと日暮れのヒグラシ日雇いに紛れる人間紛い 病院に行くべきだだが病院へ行く自体が億劫で子どもが好きだだが子どもを見ると心に翳りを孕む 薬の切れた人間の皮を被ったジレンマ飼い慣らす日々さえ紛いもの

7.30

満ち引きが美しいのは砂浜に打ち付ける波間だけこの感情の起伏は実に煩わしい 空きっ腹に珈琲を注ぐこの吐き気が自己嫌悪に由来する事は僕にだって容易に想像出来る そうだ 換気をしよう開け放った窓 梅雨明けの風が吹く

7.29

祖母は言う その子は変だと母は感情的に反論した 身に覚えがある僕は必死に感情を拵えた全部芝居だ 身振り手振りもこの笑顔も 流る人混みを見送る手放し切れなかった張りぼての感情無害を装う仮面の下 行き先無い刃が潜む

7.28

腕時計は景色を刻む海を抜け 森を抜け 花火の下手を引く君の後ろ髪を見送った あれから僕の心はずっと雨模様 ネクタイで心を引き締める別離は僕の後悔ではない君の笑顔を見られない事を悔いている 東京駅は僕の心を濡らす

7.27

グラスの縁の艶をなぞって薄蒼色の色彩の中 朝惑う憂いは精々一条 僕には過剰 シーツに微か残る体温を惜しみながら注いだ水出しの珈琲 飲み干す愛別離苦 朝霞を払い除ける苦味 冷感に吹き出す結露それが滴るまで僅か秒読み

7.26

僕等は世界をありのままに知覚できない各器官に映り響いた虚像を覗き見するに過ぎない それに抱く感情それに付随する知見それまでの人生で培った経験則 納得出来るか出来ないかそれは僕等の得て来た価値観の答え合わせ

7.25

得る物と失う物 出会う事と別れる事それは片腕で存在する事は無く天秤に掛けられるものでも無くただ不躾に 強引に 押し付けられてしまう それを美しいと君が言う理不尽に価値を見出す事の愚かさをしかして 僕は羨んだのだ

7.24

夜露を呑んで 唄を数えて同期の崩れたサラウンドステレオずれる 歪む 世界が回る 失望すら美しいのは 満たされなさに焦がれるから呑みきれない 満たされない口から溢れて吐き出しても 僕は求める ‪君は誰だっけ 君は誰だっけ

7.23

性懲りも無く死にたいと思っているこんな人間に生まれちまったもんだから仕方がないさ 希死念慮は無遠慮だから 意味なんぞあるものか 理由なんぞあるものか真っ当に死ぬ為 過不足なく死ぬ為性懲りも無く生きる理由を探す

7.22

舌打ちが嫌い 曖昧な相槌が嫌い帰路に降る雨が嫌い 人混みの喧騒が嫌いアイドルが嫌い 母の目尻の皺が嫌い生乾きの匂いが嫌い 蒸し暑い夏の日が嫌い 器の小さい僕自身が嫌い君だけがいない世界が嫌い 嫌い という言葉が嫌い

7.21

見たくもないものは見えるのに見えないものが多すぎて人の気持ちだとか 世の中の理不尽だとか 見逃さないよう目は大きく開けるが中途半端にしか世界を知覚できない斜眼子が片目しか隠せない‬ように 僕の目に一丁字なし

7.20

雨の日の白樺の匂いが懐かしくってさそれが声を押し殺して笑う貴方のようでそれが涙を流して笑う貴方のようで 貴方はまた皺が増えたなんてぼやくそれをちゃんと綺麗だよって僕は伝えられただろうか 不器用でも ちゃんと

7.19

古傷は古傷のまま痕を残す 上から隠すように保湿して 湿布してそうして重ね上げた当たり前もたった一言で崩れてしまうもんだから 当たり前なんて脆いもんだ当たり前である内に大事にしなければ 寄る辺無い夜 やるせ無い夜

7.18

寄る辺ない詩歌に乗せる中等度の独自性度外視した精巧 荒削りの技巧捻れた唯識 老耄の戯論 ぐるぐるぐるぐる 死のロールモデル自己言及のパラドックス 身の程は弁えてるぜってホラを吹いて苛辣な愛想笑いは僕を誤魔化した

7.17

土砂降りの雨 君はと言えば雨具なんぞ無くともへっちゃらさとちゃんちゃら可笑しな笑みを浮かべる ぐしょ濡れの靴 僕はと言えば雨具さえ持て余して狼狽し雨粒の一つ一つにさえ辟易して溜息 十五年の歳月 君には敵わないな

7.16

子どもたちの騒ぎ聲に紛れて土に汚れたスーツの裾 つい昨日まで少年だったはずの僕の手を引く今日の少年の手は僕のよりも随分温かくて 生命の息吹 全力の生気 来週の日曜日行けぬ我が身の柵やこれが大人になると言う事か

7.15

白露が一切の翳りを孕まないように透き通って消え入りそうなファルセット 懐かしい影を呼んで今と重ねて淀みの中に沈み自覚的な利己を心の中だけで擽る 戻らない君を慈しむよう目だけは合わせずに耳だけをそっと欹てる

7.14

過不足差異に頭を抱える 初めて君と繋いだ手は未練を抱えてそれを知って君は 尚も愚直な瞳を向けその掛け替え無さに気が付く頃には僕は新しい未練を抱えていた 失って初めて気が付くのは喪失がマイナスでなくゼロだから

7.13

時間は負の加速度を内包して止まるものを風化させる一切の抒情は入る隙を失い叙事として連なる 待っていてくれるのは無機質的な死だけ 拒絶せよ停滞感を 求めよ変化を 抗え今を笑って生きる その為に 僕等は今日を笑えるか

お題:マンゴー(菴羅)

‪安楽浄土へ結ぶ菴羅の実‬‪喰らおうと手を伸ばすも‬‪志半ばに剥がれて堕ちる化けの皮‬‪まやかしの甘味は大成を成すには味覚違い‬ ‪自らの手が届かずに苦渋を味わい‬‪首を垂れて帰る一人の家に‬‪拙宅からの小包‬‪想像とは違う安楽だが‬‪苦甘い感嘆を果肉の食…

空と言説

この世界にはもう少し期待したって良い例えば今日の晴れ空なんかは幾分僕等の心を穏やかにしてくれるだろう 笑った顔が見たいから僕らは互いに顔を向け合ったでも恥ずかしくて目を逸らして幼い空は笑い出した 春風 夏影 木漏れ日はほら 本の上で踊っている …

7.12

入射角と反射角が等しいように僕等の距離は変わらない 乱反射する回り灯篭全反射する自尊はもはや不遜屈折した自我は零時を境に実像と虚像のジレンマに映し別れる 君の明日と僕の明日は交わらない月が湖に映るのと同じ

7.11

// 届いたダンボ|ルの中確認せずにいたら果物は腐臭を放っていた 毎年楽しみにしていた諏訪の花火今年は見られそうにもないな折角の口実も無下にして指折りにしか生きられぬ貴方を僕はまた放ってしまう 腐臭が鼻を掠める 一〇〇

7.10

// 言葉無くとも想っている言葉無くとも支えている 好きだと思い続ける事を否定するからこそ苦しいのだ力及ばずとも好きだと思い続ける事をここに恕そう 貴方が幸せならそれで良いのではない貴方が幸せならそれが良いのだ 一〇〇

7.9

// 触れたいと手を伸ばせば溶けて透けて もどかしいな じれったいや 夢の中の君は 少しばかり淫乱で掴み所無い 悪戯な笑みで華奢な体躯を跨がらせて微睡みの中 僕を惑わした 秋風が吹き始めた窓辺の塵紙に 伸びる手は汚れていた 一〇〇

7.8

// まるで生きてるなんて感じねえ火脹れみたいな思い出なんて裂いて溢れろ 高尚な捨て鉢 そうして僕は僕を現行犯扱いするから大切な人すら守れず低俗な名残の涙 覆水盆に返らず 流れ着く先がせめて寛大な海である事を祈って 一〇〇

7.7

// 世界が割れる 半分に割れる思想も 人種も 夢も 希望も 魚の目に水見えず 人の目に空見えずともすれば 遠巻きには絶佳の一条 どうせ割れるなら夜空に浮かぶ銀河のように枚挙に暇がない祈りを内包して冷然な夜を切り裂いてくれ 一〇〇

7.6

// 顔面に貼り付けたマスクの居心地良さに自己乖離だと気付かず自己完結した 見境の無い優しさは元来の優しさを失い道化となるつまり詭弁であり機嫌取りだ 横着で卑屈だと思われたく無ければ口元の蒸れた俗に雨乞う事勿れ 一〇〇

7.5

// 等身大とは非情である僕の不出来を 僕の不出来のままに露呈する 輪郭を鋭利に 鮮明にする程に無力を痛感するのが耐え難いのでせめて色彩は淡く塗り上げた 手掛けた自画像は飾り気無く 頼り無げだがどうやらこれが僕らしい 一〇〇

7.4

// 始発には間に合わなかったが追い風は味方だったそれに揺れる梢枝もそれで思い返せる誰かさんの笑顔も心を満たすには十分だった 強い語気に気圧されて何クソと歯を食い縛った帰路でこそ 誰かさんの為 優しい追い風であれ 一〇〇